私は電車のつり革につかまり、沈み始めた太陽を眺めていました。
私の前の座席には男性が気持ちよさそうに眠っています。

そのとき、電車が緩やかにカーブし、夕陽が男性の背後に移動し
・・・頭皮が夕陽で赤く染まったのです


この光景に私は髪型について勝手な推理をはじめたのでした。

江戸中期以降、男達たちはなぜ前頭の髪を
後ろへ広く剃り上げたのだろうか。

男の頭髪を半月形に剃り上げるというのは、
江戸時代に成人のしるしであったというが、
そんなに格好が良いものだろうか。

チョん髷を始めてみた外国人が「日本人の男は
皆頭に短筒をを乗せている」といわれたという。

冷静に考えるとおかしな髪形ではないだろうか。
それにもかかわらず、チョン髷を格好が良いもの
と強硬に位置づけたのは誰か?
なぜチョン髷が大道を歩くことになったのだろう。

現在もそうだが、流行のほとんどは、
権力者か富豪と呼ばれる階層によってつくられている。

何しろ、権力者、大富豪、偉い人なのだから。
彼らを真似ることにより、庶民も仮権力者、
仮大富豪、仮セレブ、仮シンデレラ姫になれる。・・・・・

それでは本家本元の権力者、大富豪はなぜ流行の源を考えたのか?
人はだれもが自分を良く見せるため、欠点を補おうとするものだと思う。
刻々と髪が薄くなってくるがどうしたら良いだろう・・・悩。

そうだ!この髪形を正当化することじゃ。
御触れじゃ・・・法律じゃ。

美しく豊かな頭髪を持っていたならば、決して思い付かないこと。
権力者が自分の欠点を補うために、仕立て屋、髪結いどころ、
帽子やに無理難題を持ち掛けた。



「承知つかまりました・・・」と、お取り巻きが創意工夫した結果、
髪の薄さを補い、背を高く見せる烏帽子、
そして肩幅の広い逞しい男に見せるため武士の礼装がつくられたのでは・・・。

やがてそれが庶民あこがれの流行となっていったのではないだろうか。

つり革につかまり考えた私の「勝手な推理」の結果。
「男の頭髪を半月形に剃り上げないものは成人にあらず」
などという「おふれ」を発行した偉い人には、

頭髪を剃り上げる必要がまったくなかったのでは・・・
ということではなかったのか?・・・

・・になりました・・・





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