秋も深まりつつある農園で蝶を見ました。
秋の蝶を「老蝶」と呼ぶその名のとおり、夏の盛りの羽ばたきとは異なり、
少しの寂しさ、必死さを漂わせていました。

くたびれて土に止まるや秋の蝶  蓼太



(これから冬が来るというのに・・どこへ羽ばたこうとしているのだろうか)
秋という季節のせいか、蝶の後姿にセンチメンタルな視線を向けてしまいました。

『源氏物語』の胡蝶の巻に記してあるように、古来から日本では
花園に舞う蝶を美しく可憐なものとして讃美しています。けれど英語圏の国では、
せわしない、落ち着き無い、移り気、快楽主義、などを連想させることばとして用いているようです。

さて、蝶のフランス語はパピヨン。
その『パピヨン』を題名にした米仏合作映画がありましたがご存知でしょうか。
日本人の感覚からすると、可憐で可愛い少女が登場するストーリーを思うのではないでしょうか?

ところが・・・・

殺人の《濡れ衣》を着せられたパピヨンと呼ばれる男が、
命を懸けて《脱獄》に挑むストーリーなのです。

仏領ギアナにある断崖絶壁の孤島《地獄の監獄》
そこは脱獄不可能な監獄。
だが彼は決してあきらめません。
最後は、椰子の実を詰めた麻袋とともに断崖絶壁から荒海に飛び込んだのです。



自由のために・・・・。

パピヨンの刺青を胸にした、実在のヒーローを演じたのは名優スティーブ・マックイーン。
彼の明るく、いたずらっぽい雰囲気からなのでしょうか、
アメリカ映画『大脱走』でも収容所から脱走に挑む役を演じました。

オートバイをたくみに操りながら国境に向け、逃げるスティーブ・マックイーン。
それは補虫網をスイスイとかわす蝶のようでした。  (蝶の話・・・続く)