山田とも子のつぶやき=さいたま
画家の小沢清人さんの『春愁』という作品は
満開の桜を背景に、愁いの表情をした女性を描いている。
春爛漫の季節、その王者の桜が満開だというのに・・・悲し気な女性。
ロマンチックな作品である。
そこで、小沢さんにとっての春の愁いとは?
とお訊きすると、
「過ぎてきた月日のある場面を思い
どうということなくもなく、物悲しくなることだ」
と、お答えになった。
それでは、秋の愁い・・・「秋思」、秋の頃・・・
心に感じ思うこととはどのようなことでしょうか?
と、お訊きした。
すると・・・
「私の『秋思』とは、これからの人生についての現実的な愁いです」
私は思わず深くうなずいていた。
春愁の鏡 幾度も 磨きをり とも子
春愁という季語に頼り、この俳句を作ってからもう十数年経つ。
春のある朝のこと。
なぜか私の心が冴えない。
ついでに、顔も薄ぼんやりとしている。
すべては鏡のせいなのだ。
鏡が曇っているからなのだ。
そう思った私は、幾度も幾度も鏡を磨いたのである。
もしもここに『秋思』という季語を使ったなら、
顔の皺やシミに憂える私になっていたかもしれない。
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埼玉県下随一の繁華街、大宮南銀座。かつて見晴らし通りと呼ばれていた昭和26年頃からの光景・・
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