もうずいぶん前の話。
実家に5匹の黒猫が生まれた。仔猫の母は血統書付きのグレーのシャム。
素晴らしい血統書付きのオスのシャム猫と暮らしていたにもかかわらず、
彼女が生んだのは五匹の黒猫であった。

黒猫たちの瞳は母猫の水色ではなく、深い緑色だった。
さらに、小さな顔とほっそりとした手足、そして長い尻尾という、
まるで美しい女優のようである。

なんという美人の猫だろう。
生まれた子猫の一匹をもらおう。

私の心に躊躇いはなかった。
飼うならメスがいい、というアドバイスにしたがい、
私は一匹のメスの仔猫を手のひらに乗せていた。

さて、黒猫の名前をつけなくてはならない。
上品で気高く、りりしい容姿の猫にふさわしい名前。
ブラック?・・・ありきたりだ。
白いからミルク、と同じではないか!
三毛、黒、タマは日本猫の名前。
ハーフの猫にはふさわしくない。
実家の黒猫はメグだという。

メグ?メグねぇー。
なんとも軽い名だ。
「子」が付いていない。女性の名前ねエー。

話は逸れるが、「○○子」の「子」であるが、
かつては、高貴な子女だけのものだったそうである。

そのせいなのか、かつての女性の名前は、
タケ、とか、フミ、クマ、トラ、ユキ、カズ、キヨ、などが多かった。
その後、庶民の女の子の名前に「子」を付けるようになった。
高貴な娘に付けられている「子」に対する憧れのだったのか?

私の黒猫は、メスのシャムと、黒猫のオスとの間に生まれたハーフである。
父親はどんな黒猫なのだろう!
それにしても、実家でのうのうと暮らす血統書付きのシャムのオスは何をしていたのか!
血統書つきのメスである妻を黒猫に奪われ、
5匹の子まで生まれる結果になるとは・・・
何をボーとしていたのか。

ところが一ヵ月後。
実家の兄嫁の話であるが・・。
実家のお向かいの家の奥さんが、ニコニコと言ったのだそうだ。
「おかげさまで、私の家に、見事なシャムの仔が3匹生まれました・・・」
「?」
「うちにも血統書付きのメスのシャムがいるんですのよ。オホッホッホッホッホッ」
「?」
「お宅様のシャムが頻繁に遊びに来ていたので、ひょっとして?
と思っていたんですのよ。オホッホッホッホッホッホッホッホッ」
兄嫁は置いていかれた上等な和菓子を見つめ
しばらくのあいだ????だった。

でも、実家で生まれたハーフの黒猫のほうが、ずーっと美人だ。
毛並みも艶やかで、シャムのように足が太くない。

さて、名前をつけなくてはならない。
それも、ハーフにふさわしい名前を。
気高くりりしい名前。
それも、血統書付きの母親から生まれた美人の猫にふさわしい名前を。

マーガレット・・・いや黒のイメージではない。優しすぎる。もっと強い名を。
オードリー・・・ドの濁音が・・・ジョディ・・ジュリア・・・ちょっと違う。
・マギー・・・似合いそうだが。
カロリーヌ・・・清純そうだ。
キャサリン・・・似合いそうだが、台風を思わせる。
ベティ・・・ジャック&ベティ。ミランダ・・シャロン、アリーサ。メルリ・・・

何回も呼んでいるうちに舌を噛むかもしれない。

リンダ・・素敵な名前・・ヘイ、リンダ・・・
泣かないで・・そうゆう歌の文句あった。

ジーナ・・・繰り返し呼ぶとナージ・・になる。
高貴と美しさを兼ね備えている名前・・
エリザベス!そうだ。エリザベスにしよう!
私の黒猫は、エリザベス・テーラーと同じ目の色である。

美女エリザベス・テーラーが主演した映画に
「熱いトタン屋根の猫??だったと思うが」というのがあった。
それに高貴と言う点から言えば、かの大ブリテン島を支配してきた、
王女の名前にも多い。

あれやこれや大騒ぎの結果、美猫の名前は、エリザベスとなったのである。 

生まれて一ヶ月でもらってきたエリザベスについて判ったこと。
それは、ハスキーボイスである・・・ということである。
だが、みゃーみゃー、キーキーメーメーという、媚びたような声は、
エリザベスにふさわしくない。
ハスキーボイスは威厳があって良いではないか。
それに重厚である。
猫のツンとした人を人と思わないところが猫らしいのだから。

そうだ!
首輪を付けてあげよう。それもエリザベスにふさわしい豪華な首輪を・・・
黒猫エリザベスの首輪のことを書こうとしたところ、

電話が鳴った。

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埼玉県下随一の繁華街、大宮南銀座。かつて見晴らし通りと呼ばれていた昭和26年頃からの光景・・・
山田とも子=つぶやき
読売新聞埼玉版 「ほのぼの@タウン」さいたま市レポート集 
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