「我が人生に悔い無し」ときっぱり言い切れる人がうらやましい。

私は・・というと、
あのとき、真剣に勉強していれば…
あのときー兄の助言に従っていれば…
あのときー立派な友人を見習っていれば…
あのときー父母の体力を解っていれば…。
 


我が脳力・才能・忍耐力の貧しさを顧みず、
「あのとき」を悔やんでいるのである。
「何事も経験」「失敗を生かして」などと人は言う。
だが偉大な科学者でも化学者でも数学者でも発明家でもなく、
ごく普通の人間である私の人生の幕は、
明日、明後日、とズルズルと下りるだろう。



航海者のための海図のように、
人生を「効率良く」「安全」にさらに「右肩上がり」に
目的地へと導いてくれる「ばら色の人生への案内書」があれば、
と私は思う。



だが、どなたかの言葉のように「人生いろいろ」である。

体力、財力、海の者、山の者、川の者、
南方の者、北方の者、美女と野獣、赤と黒、
海苔巻きに稲荷寿司、白雪姫と毒リンゴ、一寸法師にお椀の舟、
海賊・馬賊、梅に鶯、花と蝶、番茶に抹茶…
限り無い。



何かよい方法はないか…と私は思案する。
そうだ!今までの知識と経験はそのままに、
十代のころに戻れれば…



そうすれば、失敗の経験を生かし、
まず、受験勉強中は絶対に机に突っ伏して眠らない。
アメリカの俳優の名前を暗記するより、
英語の単語を暗記しよう。
両親、兄のアドバイスには耳を傾け、
心に留めよう。親には孝行をし、
近隣の人には常に笑顔で接し、
「若いのに偉いわねぇ」と言われるようにしよう。
しかし、知識と経験はそのまま十代のころに戻る…
など無理な話である。


「親の意見と茄子の花は千に一つも無駄がない」
かつてお説教に聞こえた親族の言葉が
妙に身に沁みるこのごろなのである。       



薔薇色の夢縫い合わす糸の欲し  とも子



2020年4月の初めに

さいたま模様トップページ

  「さいたま模様」の編集者山田とも子が
折々のことを書いています。懲りずに訪れてください